鞆の津ミュージアム『スピリチュアルからこんにちは』が想像の向こう側の世界 だった【広島福山】【アールブリュット】

江戸時代の街並みが、今も色濃く残る広島・鞆の浦。港町の古い路地には、今日も心地よい海風が吹く。

この鞆の浦、情緒溢れる美しい街並みが昔から愛されてきた。近年ではアニメ「崖の上のポニョ」(2008年)や、ドラマ「流星ワゴン」(2015年)などの舞台にもなり、訪れる人も年々増えてきているようだ。

海風のせいなのか、街に漂う生活臭はどこか錆びた感じもする。

でも、古くて細い路地は常に観光バスや車で渋滞しており、歩く老人のスレスレを車が素早く通り抜けて行く。その様は背筋がヒヤリとさせられるものがあったけど、街が勢い付いているようにも感じた。

古いものと新しいものが急速に混ざっている最中というか、観光地として進化しつつあるというか。
とにかく何だか少し変わった街だなあと思いながら、私も迫ってきた車をオワッと避けた。

さて、そんな鞆の浦には、実は大変珍しい美術館が存在している。

アールブリュットに特化した「鞆の津ミュージアム」である。その独自の展示内容から、日本だけではなく全世界に注目されている美術館である。

今回鞆の浦に来たのは、ここで開催されている『スピリチュアルからこんにちは』という展示を観るのが目的だった。

スピリチュアルとは、たびたび精神世界という言葉がイコールで定義されると思うのだけども、皆さんはこの言葉を聞いて浮かぶものは何だろう。

私の場合は、失礼ながら「胡散臭いもの、良く分からないもの」というイメージだ。

そもそも精神世界とは、実体が無い。ハッキリとした証明も出来ない。
胡散臭いと思うのは、理解が出来ないからだと思う。

だけどそんな精神世界に出会った時。その精神世界が具体化された、物や音や文字などに出会った時。その精神世界の産物が、自分の想像を遥かに超えていた時。

何故だか良くわからないんだけど、酷く感動してしまうことがある。

その感動が、怖くてなのか驚いてなのか、悲しくてなのか嬉しくてなのか、何故起こるものなのか分からない。
陳腐な言葉かもしれないが「アドレナリンがドバッと出る」感じがする。これはきっと、私だけの感覚ではないだろう。
私がいわゆる珍スポに行き続けるのも、あの感動とあの感覚が忘れらないからでもある。

さて本題の鞆の津ミュージアム「スピリチュアルからこんにちは」展だが、私のような正式に芸術を学んでいない者には、芸術的な価値としてどれくらいのものかは分からない。

しかしながらそんなことよりも、鞆の津ミュージアムは精神世界との「出会い」を体験出来る場所として素晴らしいところだった。

今は無き 「占い天界」を復活した展示

普通の生活をしていたらまず出会わない…むしろ関わらないようにするかもしれない胡散臭い物達が、ハローハローこんにちは、と迎え入れてくれるのだ。

ミュージアムとは現地に観に行ってなんぼだと思うので、その内容については詳しくは書かないけれど、(というか沢山有り過ぎて紹介しきれない。)

大川隆法など、スピリチュアルに関連する著名人を自らに憑依させて書いたというサイン色紙(宇川直宏)

宇宙人がもし庶民的な生活を送っていたら、という強烈な設定で描かれた絵画(宇根正浩)

亡き祖父の葬式や墓を、ミニチュア模型や名刺に表現することで供養している少年(藤井柊輔)

こうやってザッと写真を並べてみるだけでも、画面の向こうにある各々の精神世界の広大さが分かるだろう。
私もこれらを眺めているだけでも、あそこの空間を思い出して、今なおゾクゾクと背筋を登るものがある。

中でも特に衝撃を受けたのが、創作仮面館の部屋である。

そこは、栃木に実際にある創作仮面館を再現したという、自然光を採り入れた少し暗い部屋だった。

そしてそこには、館長の岡田さんより寄贈された300点もの仮面が、壁や天井にビッシリと飾られていた。

部屋に一歩入った私は、鳥肌が止まらなくなった。
仮面の一つ一つが、こっちを、見ている。

純粋な狂気を感じての恐怖なのか、純粋であるが為の極限の美しさに出会えた嬉しさなのか。
分からないけれどその衝撃は、やっぱり感動の種類だった。

ここ鞆の津ミュージアムに居たのは1時間くらいだったと思う。外へ出ると、鞆の浦の錆びた海風を頬に感じた。平和な街並みは、精神世界から現実へと引き戻してくれる。
よく分からないものにギュルンギュルンに掻き混ぜられた頭が、すーっと落ち着いて行くのを感じていた。

「スピリチュアルからこんにちは」は、想像を超える精神世界との「出会い」を楽しむ場所だとやはり思った。
ハローハロー、しかもこんなにも安心で安全に、精神世界の入り口を開いてくれている。

もし更に興味が湧いたなら、実際に現地に行って作者に会ってみるのも良いと思う。その精神世界にドップリハマってしまって、そのまま戻ってこれなくなるかもしれないけども…

宇宙村村長の景山八郎の貴重な絵

作者が亡くなっていたり、他の何処へ行っても見ることが出来ない貴重な作品だらけの展示だ。
是非鞆の津ミュージアムに観に行って、想像を超えた精神世界と出会ってみてほしい。

鞆の津ミュージアム
『スピリチュアルからこんにちは』
2015年7月20日まで
住所:広島県福山市鞆町鞆271-1
営業:10時-17時、月火定休
料金:600円
http://abtm.jp/

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