船でしかたどり着けない、湖上に浮かぶ発電所廃墟へ

先日とある廃墟へ行った。
写真を一目見てから、ずっとずっと憧れていた廃墟だった。

その場所へは、大阪からだと車で5時間程かかる日本のド秘境である。文字通り山超え谷超え、さらにそこから船でしかたどり着けないという条件ではあったけども、そうまでしても行く価値がある場所だった。

辿り着いたそこは、幻のような、湖上の廃墟だった。

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検索すればすぐにヒットするので、あえて詳しくは書かないが、その場所へは貸船に乗ってむかう。二人乗りの小さな船。バランスを崩せばすぐ湖へ真っ逆さま。
ライフジャケットを着て、ドルルルとエンジンを噴かせる。

こういう冒険に、ずっと憧れていたのだ。

波しぶきをたて、エンジン全開で進んでいると、なにやら湖上に浮かぶ白い物が見えてきた。

これが、湖上に浮かぶ廃墟。

ブルーの空と、エメラルドグリーンの湖と、白い廃墟。対比がとても美しい。込み上げてくる感動を抑えられずにいられなかった。

エンジンを緩め、近づく。

溜息をついた。
よくぞ、こんな状態で残ってくれていた。

小さい方のモーターエンジンに切り替え、中に入る。こすらないように、慎重に進む。

まるで、

夢を見ているみたいだった。
この景色が、ずっとずっと観たかった。

船を寄せる。

ここはダム湖上であり、ここはどうやら3階部分に当たるらしい。
この日は水位が低く、普段は水没しているという部屋も今は水が干上がっている。

緑が美しい。
人が働いていた時の姿なんて、想像できない。

廃墟って、窓やドア枠が額縁みたいになるから不思議だ。

天井には丸い穴。天窓があったのか。

水がある所ってのはいいなあ。光が反射して、ずっと眺めていられる。
ゆらゆらと揺れる光、波紋に乗って広がる光。

ダム湖だから波はないけれども、水に洗われて角が丸くなったガラス。

透かしてみると、湖面と同じエメラルドグリーンに鈍く光った。

吹き抜ける風が涼しくて、今という時間を忘れてしまう。
どうして、ここに居るんだっけ。

何もかも忘れる、何もかもから逃げる、その瞬間が麻薬みたいで、麻薬中毒者のようにふらふらと旅をしてしまうのかもしれない。

先ほどの場所へ戻る。

地下、といっても2階部分だと思うけど、覗きこんでみた。

ダム湖の特性なのか、水は藻によってエメラルドグリーンをしている。
外からの光が鈍く差し込んで、そこは神聖なくらい美しい空間になっていた。

なんだよなあ。

ズルいな。

ぶるる、と寒気がした。

あまりにも神秘的な物をみると、人は震えるのだと思った。

とズラズララと写真を眺めて、この冒険はここで終わり。

帰り道、とても興奮しながらも、静かに確信していた。私が知らないだけで、まだ観ぬ景色が世界に山ほどある。それに出会うことができるかもしれないなんて、なんて楽しみなことだろう。

しがらみや思うことも沢山あるけども、中毒の様な旅路からは、まだまだ抜け出せそうにない。

(H27.9)